メンズエステに関する覚え書き
メンズエステの撮影に最近出向くことが増えている。メンズエステは風俗店が意味するところの風俗とは異なるが、撮影しながら、ある意味で風俗店を越えて風俗らしいと思うことがあって、ここにその理由を簡単に記しておきたい。
風俗は常に中心を迂回する交通だ。禁ずる行為をせず、行為の代理が迂回である。プレイにより迂回の道筋は様々だ。メンズエステはそのもっとも外側を迂回する。メンズエステ風俗より風俗らしいのは迂回の距離において他の風俗に比べて大きいからだ。ソープはまた別として、ヘルス行為はいわゆる本番なしの射精という着地点が決まっていて、その放物線の中に多様さがあるが、射精を目的にしない(できない)メンズエステは、男性器に触れることなしにその周りをいつまでも回り続けるのである。
決して及ぶことのない核心部に隣接する場所をメンズエステでは「鼠蹊部(そけいぶ)」と言い慣わす。通常鼠蹊部から遠い手足からマッサージが始まる。やま場となるのは鼠蹊部のマッサージで、四方から鼠蹊部へセラピストの手が伸ばされる。指や腕は核心部を迂回する。核心の際で運動がされるため、思いもよらない回遊失敗がときに生じ得る。このような接触をレビュー記事では「事故」とよび、重宝がる。
メンズエステの迂回性は、利用者の心情にも表れる。風俗は避けたい利用者や風俗に飽きてしまった利用者がメンズエステをプレ風俗、ポスト風俗化させるのである。またセラピストの裾野も風俗よりも広がるだろう。風俗への抵抗のあるセラピストや、いろんな理由で風俗から上がりたいと考える者を受容させる受け皿がメンズエステには備わっている。
東京という地理的特性は迂回性、回遊性を宿命的に招くだろう。皇居を中心とした円環状、放射状のこの都市構造はメンズエステと親和するのに十分だ。
風俗は射精までの時間を表現し、メンズエステは中心を指し示す場所を迂回・回遊によって表現している。ここに風俗店とはことなる可能性が生じる。
ドキュメンタリーや物語の方法で主題に迫る写真よりも、私たちはトポロジー(地政学)からアプローチする写真論で、セラピストたちを捉えられるかもしれない。
上の写真は、撮影したメンズエステ「MEN’S ESTHE DIARY」のセラピスト写真。丸抜きの画像が独特だ。